小学校の修学旅行で、お風呂から戻ってくると、布団と枕が部屋の隅に重ねられていた。
布団と枕は旅館の人が運び込んでくれるから、敷くのは自分たちでやれということだ。
しかし、枕が一人分足りていなかった。
押し入れを見ようと襖を開けようとしたが、建付けが悪いのかびくともしない。
俺がやってみると友人。
やはりびくともしない。
その後も俺が、俺がとチャレンジしたが誰にも開けられなかった。
途中、「ん、んん~」
と変な声も漏れた。
当然、仲間の誰かの声だと思い。
「おい、変な声出すなよ」
と言いながらみんなで笑った。
結局押し入れは開かずじまい。
古い旅館だからこんなこともあるのだろうと、みんなは時間までそれぞれ過ごす。
その後、消灯時間の見回りの先生がやってきた。
「みんな寝ろよー」
「枕が足りませーん」と一人の生徒が言うと、
「ここにあるだろ」
と言いながら、先生は襖の取っ手に手を掛けた。
そして襖は何事もないようにスッと開いた。
文章:百百太郎
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