サスペンス・ホラー

怖い話『開かない襖』

 

小学校の修学旅行で、お風呂から戻ってくると、布団と枕が部屋の隅に重ねられていた。

布団と枕は旅館の人が運び込んでくれるから、敷くのは自分たちでやれということだ。

しかし、枕が一人分足りていなかった。

 

押し入れを見ようと襖を開けようとしたが、建付けが悪いのかびくともしない。

俺がやってみると友人。

やはりびくともしない。

その後も俺が、俺がとチャレンジしたが誰にも開けられなかった。

 

途中、「ん、んん~」

と変な声も漏れた。

当然、仲間の誰かの声だと思い。

「おい、変な声出すなよ」

と言いながらみんなで笑った。

 

結局押し入れは開かずじまい。

古い旅館だからこんなこともあるのだろうと、みんなは時間までそれぞれ過ごす。

 

その後、消灯時間の見回りの先生がやってきた。

 

「みんな寝ろよー」

 

「枕が足りませーん」と一人の生徒が言うと、

 

「ここにあるだろ」

 

と言いながら、先生は襖の取っ手に手を掛けた。

そして襖は何事もないようにスッと開いた。

 

文章:百百太郎

 

画像提供元 https://visualhunt.com/f7/photo/27117670970/5a7a1d5037/

 

関連記事

  1. 怖い話『ジョギングコースの自転車』
  2. 怖い話『戻ってきたのは誰?』
  3. 怖い話『お前がいないと』
  4. 怖い話『ボンネットの女の子』
  5. 怖い話『体育倉庫の子ら』
  6. 怖い話『おまえだけ』
  7. 怖い話『ガラス越しのポスター』
  8. 怖い話『ごめんなさい』

おすすめ記事

『ありがとう』

あたしは、障害者としてこの世に生まれた。幼い頃は何も感じなかった…

ノンフィクション作品の魅力

私はフィクション作品が好きだ。なぜならありえないことを経験したかのように味わえるから…

小説:『彼女との約束(2)』

前回まで・小説:『彼女との約束(1)』前回からの続き&n…

『自分の心には…』

周りに嘘をついて…誤魔化しがきいても…自分の…

発達障碍の一部は雑学博士

 広汎性発達障碍の一部において、雑学(トリビア)をたくさん持っている人を見かけます。…

新着記事

PAGE TOP