とある献血ルームにて。
すでに何度か訪れたことのある献血ルーム。
端末ブースに案内され、問診を兼ねたアンケートにこたえていく。
モニターに表示された質問にたいして、タッチペンでYesNoでこたえるものだ。
海外渡航歴に関するもの(90年代にイギリスに渡航経験があるか)、最近発熱があったか、今日の体調はいいかなどといった質問がある。
回答を終え受付に行くと、女性が満面の笑みを浮かべている。
と思ったが、よく見ると目がまったく笑っていない。
昼食をとっていないと言うと、ちいさなバウムクーヘンを手渡された。
待合のテーブルに置いてある、ちいさなお菓子たちのひとつであった。
ぱさぱさのバウムクーヘンをかじっていると、驚くほど痩せた若いカップルがやってきた。
血を提供している場合なのだろうか。
こちらの献血ルームでは、無料でアイスが提供される。
ケースから好きなものを勝手にとっていいのだ。
わたしは今日はなんだか冷たいものを食べる気にはなれなかった。
このアイスがお目当てでここにやってくる人もいる。
結構長い時間待って、問診室に呼ばれた。
問診の医師は、半藤一利の日本史の本を読みふけっていた。
あの…と声をかけると、慌ててばつが悪そうに本を閉じた。
やたらと面倒くさそうにしている。
採血などが終わり、いよいよベッドへ。
ベッドのわきに小さなテレビ画面が置いてあり、通販番組をやっていた。
向こうのほうでは中高年男性が、献血200回を超えて記念品をもらったと看護師に伝えていた。
それを聞いた看護師は、なんとも気のない返事をしていた。
中高年男性は不満そうだった。もっと驚いてくれると思ったのだろう。
なんともけだるい、なんということもない、献血ルームのありふれた日常である。
え? オチ?
すんません、ありません。
お詫びと言ってはなんですが、筆者の描いた猫の絵で、カンベンしてください。
文章:parrhesia
画像提供元 https://foter.com/f7/photo/3967706709/7b7d7f93e7/