コラム

吉田徹『アフター・リベラル』講談社現代新書

 

吉田徹『アフター・リベラル』講談社現代新書のご紹介

 

本書では、二十世紀後半に政治の原理として支配的になったかに見えたリベラル・デモクラシーが、なぜ危機を迎えているのかを解き明かします。

リベラル・デモクラシーは、リベラリズムの経済的側面の抑制と、民主主義の革命志向の抑制によりリベラリズムと民主主義とが不自然に結合し共存したものでした。

この均衡は次第に失われていきます。

政治的対立が階級から離れ、経済的次元ではなく価値的・文化的次元に依拠することになり、これに対抗するものとして権威主義的な政治が出現
してくるからです。

 

興味深い指摘は、こうした状況を用意したのが68年革命の運動でもあったということです。

個人を抑圧する集団や組織からの解放をめざし、個人のアイデンティティの尊重と自己決定権の強化をめざした社会運動は消費社会と新自由主義に親和的なものとなりました。
こうした運動は既存政治をも変え、その政治に対立するものとして権威主義的な政治を招き寄せる結果になってしまいました。

凋落するリベラリズムを再生させるために、著者はいくつかの提案をしています。

 

ひとつは、個人のアイデンティティそのものを絶対視せず寛容なリベラリズムを対置させることで均衡を取り戻すことです。

もうひとつは、政治が再配分や経済的平等性に敏感になり、社会的平等をもたらす経済的平等のために個人の自由は制約されうるという合意を取り付けることです。

最後に、人々の間の違いではなく、何を共通としているのかについての合意を得る努力を続けることとしています。

 

本書は、現代という暗い時代の見通しを得ることのできる、大変な労作です。
筆者は一読しただけではまだ飲み込めない部分が大きく、何度も読みたい本だと思っています。

文章:増何臍阿

関連記事

  1. 小説:『自分の道(4)』
  2. A型作業所、B型作業所の収入は何で決まるのか
  3. 西山朋佳女流三冠が朝日杯の一次予選を突破
  4. 高校サッカーのスーパーシード(2023年度版)
  5. 浜矩子,城繁幸,野口悠紀雄,ほか『日本人の給料 – …
  6. ほぼ日刊イトイ新聞『岩田さん 岩田聡さんはこんなことを話していた…
  7. 仕事の縁はどこで生まれるかわからない
  8. ショートショート:『自己中過ぎる夫に対する妻の仕返し』

おすすめ記事

コロナに罹らないではなく、発症してもウイルスを撃破する身体づくりをしよう

 コロナウイルスによる自粛は続いています。(解除されたとしても、当分は元通りにはなら…

『置いて行かれる』―同じ位置にいたはずなのに―

周りを見渡すと…夢を追いかけ一生懸命にやっている。&nbsp…

あなたはコロナのワクチンを打ちたいですか?

 コロナウイルスワクチンの接種が、国内において始まりました。 「積極的に接種した…

障碍者はどのような分野に就職するのか

 身体障碍、精神障碍、知的障碍によって活躍できる分野が異なる。 身体障碍者は事務…

親殺しのパラドックスについて素人が考えてみた。

みなさんはタイムスリップできるならどの時代に行きますか?という質問をしたのも、今…

新着記事

PAGE TOP