コラム

【第四回】『失敗と成功の関係を理解する』

 

ちきりん『マーケット感覚を身につけよう』ダイヤモンド社 の紹介

 

本書は、「マーケット感覚を身につけること」がこれからの世界を生き残る重要事項であることを示し、そのための具体的な方法について次の5つを提示しています。

 

  1. プライシング能力を身につける
  2. インセンティブシステムを理解する
  3. 市場に評価される方法を学ぶ
  4. 失敗と成功の関係を理解する
  5. 市場性の高い環境に身を置く

 

第四回は、「4.失敗と成功の関係を理解する」についてご紹介します。

 

失敗と成功の関係を理解する

 

マーケット感覚を鍛えるための4つめのポイントは、失敗と成功の関係を理解することです。

 

「シリコンバレーは失敗に寛容だが、日本社会は失敗を許さない」と日本ではよく言われます。著者はこの認識は誤りであると断定します。

 

シリコンバレーは失敗に寛容なのではなく、「失敗経験がない人をまったく評価しない」のです。失敗経験がないということは、できる範囲のことしかやってこなかったのではないか?と疑われるということであり、成功するための学びを得ていない、と捉えられてしまうのです。

 

「失敗に寛容」という言い方には、失敗は悪だが一度くらいは許すべきだ、というニュアンスが含まれています。著者は、「失敗は悪」という認識そのものを改めるべきだと主張します。

 

「失敗する可能性の高いことはやらない」という態度でいると、進歩が止まってしまいます。

外科手術の技術も、それが始まった当初は麻酔もなく、大変な手術で失敗も多くありましたが、その数々の失敗があるからこそ現在の医療というものがあるのだ、と著者は言います。

 

なんであれ成果を出すためには、「正しい方法を習い、反復練習で覚える」というステップと、「学んだことを実践し、現実的な環境下で成果が出せるよう経験を積む」というふたつのステップが必要です。

学校での学びに加えて、市場での実践経験がとても重要です。

 

市場での経験が重要になる例として、「読むべき本」について挙げられています。

 

学生が読むべき本は、以前であれば学校や出版社といった組織が選び、学生はそれを読むだけでした。しかし、現代では情報があふれかえり、「読むべき本を取捨選択する力」がとても重要であり、それは色々な本を手に取ってみて失敗もするけれど、そうして読むべき本を選び取る力を培っていくことができるのです。

 

そうやって市場での経験を積むのは、フィードバックを得るためです。子供のころは叱られることによってフィードバックが得られましたが、大人になるとそういうことはなくなり、成長が止まってしまいます。

市場に問うことでフィードバックが得られ、何が良かったか、あるいは悪かったかということが分かり、成長することができます。

 

成功への標準プロセスが変化しています。

表現の分野でも、以前であれば一定のクオリティを持ったものを組織に提出し、そこからデビューしていましたが、ネットやSNSの世界でまずクオリティは低くても世に問うてみて反応を見、フィードバックを得て、そこから学びクオリティを上げていった表現者がたくさん現れています。

 

失敗を成功の反対概念と捉えていると、失敗しないために延々と準備しつづけることになってしまい、結局成功できないことになってしまいます。

 

市場での失敗をどんどん重ねていって、そこからたくさんの学びを得ることがとても重要だと著者は言っています。

 

 

次回は、「5.市場性の高い環境に身を置く」についてご紹介します。

 

https://www.diamond.co.jp/book/9784478064788.html

©マーケット感覚を身につけよう | 書籍 | ダイヤモンド社

 

文章:増何臍阿

 

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