コラム

映画『階段通りの人々』をご紹介!

 

『階段通りの人々(1994)』(原題:A Caixa)は、ポルトガルのマノエル・ド・オリヴェイラ監督が描く群像劇。

 

はじめに

 

こころ洗われる映画です。

 

舞台はリスボンの街の階段通りで、下町の住人たちが悲喜こもごものやりとりを繰り広げるファンタジー作品です。

原題は「箱」を意味し、盲目の老人が通行人からお恵みを受け取る「さい銭箱」をめぐってストーリーは展開します。

 

みどころ

 

苦しい生活をする盲目の老人の娘は洗濯女をしており、娘婿は遊び人なので非常に苦労をしている。施しを受けるための「箱」を奪おうとする不良な輩が老人にちょっかいをしたり、ボディコンスーツに身を包んだ美女(娼婦と思われる)が賽銭を入れてくれたり、酒場に現れる音楽教授はギターを携えて美しいメロディーを奏でる。

 

下町の生活が、そのほの暗さを基調としつつも暗くなりすぎないのは、随所にコミカルな演出が施されているからでしょうか。

途中、突然ハチャトゥリアンの「剣の舞」が流れる中せかせかと歩く通勤者たちの群れが描かれたり、豆売り女が不景気を嘆いたり、しょっぱなから立ち小便をする中年女性がでてきたり、生活の悲惨さが、品のよい喜劇的な演出で陰影ぶかく描かれるのです。

 

シンプルな会話で描かれる「寓話」で、ある種枯れた味わいのあるともいえる、絶妙なバランス感覚に支えられた映画です。

 

酒場で音楽教授がギターで奏でるのは、シューベルトの「アベ・マリア」。

と書くと、なにやら気恥ずかしい受け狙いの作品なのかと思われる向きもあるでしょうが、まったくそんなことはなく、このアベ・マリアが本当に美しいのです。

 

唐突にバレリーナたちの踊りがでてくるシーンがあるなど、楽しめる要素はふんだんにあります。

 

ネタばれになるので映画のなかの「事件」には触れませんが、結末は、ひじょうにすがすがしいというか、モヤモヤ感なく、しかも納得感が得られる稀有な映画です。

 

 

さいごに

 

この映画はある種の「寓話」としての映画ですが、説教臭いところはみじんもなく、大変観やすい作品となっています。

 

ど派手な演出とかスピード感あふれるカメラワークとか、胸躍るストーリーといったものは、この映画にはまるで無いので、そういうものを求める方には不向きかもしれません。

 

しかし、落ち着いてじっくりと愉しむという意味では、珠玉の逸品なのではないか、と筆者は思います。

 

とてもおススメです。ご興味があれば是非!

 

文章:parrhesia

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