年収1200万、将来の幹部候補というのは聞こえがいいでしょう。外部からすれば、夢のような夫と結婚できたと思われるのではないでしょうか。

　夫となった男の本性を見るまではそのように思っていました。初対面のときから愛想がよく、デートを重ねていたときも優しく振舞ってくれていたので、表裏を使い分けているとは思いませんでした。

　今から思えば、夫は猫をかぶっていたようです。籍を入れてからというもの、人間が豹変してしまいました。これまでの優しさは姿を消し、妻を奴隷のように扱うようになりました。反論しようものなら、ガラスのコップを投げつけてきます。女は身の危険を感じ、夫に意見することができなくなってしまいました。

　夫は女遊びが大好きな人で、手取りの半分を女につぎ込んでいました。酒も大好きで一カ月で十万円ほど消費します。これだけで大半のお金が消えていくこととなりました。

　ギャンブルも大好きで、土日はパチンコ浸りでした。一日で数万円、負けることも珍しくありません。お金は見えないものに、どんどん吸い取られていきました。

　家賃は一カ月で八万円ほどかかります。女遊び、酒、家賃代、パチンコ台を合計すると年間八〇〇万円くらいになります。手取りは年間で九〇〇万くらいだったので、残金はわずかしか残りません。年収一千万円以上とは思えないような、貧困生活を送らされることとなります。隠れ貧困層にカウントされるのではないでしょうか。妻の食事はもやしばかりで、肉を食べる機会は訪れませんでした。

　蛍光灯がチカチカとしています。本来なら取り換えるべきなのでしょうけど、夫はなかなか取り換えてくれません。女遊び、酒、ギャンブルに使うお金はあっても、蛍光灯一つ変えるのすらケチる人間でした。

　現状を打開するために、パートに出たいと伝えます。女は家で仕事をするという考え方を持っているのか、許してくれませんでした。夫としては逃げられるのが怖かったのかもしれません。こんないいかたはしたくないですけど、夫の価値は金だけだったのです。それがなければ、人間としての存在意義を失います。

　クズと一緒にいたとしても、月日が無駄になるだけです。夫がろくでもないことを世間に見せびらかすために、日常の様子をYou tubeに流すことにしました。内容についてはこっそりと録画しておきました。

　あまりにひどい仕打ちだったからか、反響は非常に大きなものでした。わずか一時間で再生回数は二百万回を超えていました。

　夫がいつものように帰ってきたあと、インターネットに流した動画について知らせます。自分の醜態ぶりがさらけ出されているとあって、夫は顔面蒼白になっていました。

　夫は翌日に会社に呼び出され、解雇通告を受けることとなります。私は働き先を失った男をすぐに捨てることはしませんでした。あの世に旅立ってもらい、遺族年金をもらう必要があります。ここまで我慢したのですから、もらうものくらいはもらわなければ割に合いません。

　夫は一週間後に自殺しました。悪い意味で有名人となってしまい、どこに行くこともできなくなってしまっていたのです。メンツを重視していた男だったため、社会からろくでなし扱いをされるのは我慢ならなかったようです。

　夫の死後、妻は月一〇万の遺族年金とパートのお金で楽しい生活を送ります。夫の残した家については処分し、お金にしました。

　腐っても鯛とはいうけど、夫の残してくれたお金は役立っています。人間性はとことん最低でしたけど、お金のある男というのはいいものですね。皆さんも将来のために、お金のある男と結婚しましょうね。人は裏切るけど、お金は守ってくれますよ。

文章：陰と陽

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