サスペンス・ホラー

怖い話『階段からくる子』

 

小学生のある日、お昼から雨が降り出した時のこと。

下校時間にはすっかり本降りです。

午後から雨という予報だったのですが、わたしは傘を忘れて家を出たのでした。

みんなは傘を用意してきていて、次々と下校していきます。

わたしは教室で、雨がやむのを待っていましたが、そのうち、みんな下校してしまい、ひとり残されてしまいました。

 

わたしは仕方なく席を立ち、雨に濡れながら帰ろうと覚悟を決め、1階へ降りていきました。

1階に降りると雨の中、お母さんが傘をさして歩いてくるのが見えました。

 

- 迎えに来てくれた! -

 

お母さんは傘を手渡すと、わたしが傘をさすのを待つ間もなく、急かすように腕を引っ張ります。

それどころか

 

「走って!」

 

と、わたしの腕をつかんで走り出しました。

 

戸惑っているわたしにお母さんは言いました。

 

「傘を持ってくるように電話してきたの、あなたじゃないよね?

今、3階の窓から手を振って降りてくる子、あなたじゃないよね?」

 

文章:百百太郎

 

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