サスペンス・ホラー

怖い話『落ちていった人影』

 

友人と二人で廃墟団地へ、探検気分で入った時のこと。

 

各部屋を見て回っていると、マンガやエロ雑誌が放置されている部屋がありました。

わたしたちはその本に見入っていました。

それも飽きた友人が、

 

「他の部屋も見てくる」

 

と部屋を出ていきました。

しばらくすると、本に見入っているわたしの視界の端に人影が映りました。

それは窓の外のベランダの縁を、綱渡りの要領で歩いていました。

 

― あいつ馬鹿なことしてるなぁ ―

 

などと思っていると、人影が消えていました。

そこは3階です。

そちらに目をやると、縁に掴まっている手が見えました。

 

― 落ちかけてる! ―

 

わたしは慌てて駆け寄り、友人を引っ張り上げようとしました。

とっさに掴んだのは髪の毛でした。

しかし、髪の毛がブチブチブチと千切れる感覚がしたかと思うと、友人は落下していきました。

その場に呆然と、ふさぎ込んでいるわたしの背後から、

 

「どうしたの?」

 

と、落ちていったはずの友人が声を掛けてきました。

 

わたしの手には、髪の毛の千切れる感覚だけが残っていました。

 

文章:百百太郎

 

画像提供元 https://visualhunt.com/f5/photo/32975269634/fd92edbbcd/

 

 

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