大関の朝乃山は今場所二度目の不戦勝で、九月場所の成績を七勝三敗とした。(十日目終了時点)
同じ力士が複数回にわたって、不戦勝による勝ち名乗りを受けるのは珍しい。ほとんどの力士は、不戦勝を経験することなく場所を終える。
過去の最高記録は一場所で三度の不戦勝となっている。三度目の不戦勝となればタイ記録、四度目の不戦勝となれば記録更新となる。朝乃山が新記録を打ち立てることになれば、歴史に名を残すのではなかろうか。近年は相撲力士の大型で怪我も増えているため、四度の不戦勝もありえなくはないと思われる。
不戦勝のメリットとしてあげられるのは、確実に白星を積み上げられることである。不戦勝による勝ち星は翌場所の番付にプラスに働く。過去には不戦勝による白星で、三役に上がった関取も存在する。
幕下以下では七番しか取らないため(一人だけ八番相撲となることもある)、一つの白星の重みは変わる。幕下の上位であれば、不戦勝によって関取になれる、なれないが変えることもありうる。
不戦勝はいいことづくめではなく、デメリットもある。一つ目は本戦での相撲感が鈍ってしまうこと、二つ目は懸賞金をもらえないことである。(懸賞金は幕内のみ)大関ともなると、懸賞金は多いため、二勝の代償として五〇万~一〇〇万円の金額を手放すこととなる。相撲は稼げる期間も短いため、金銭的には痛手といえる。
相撲を取ることなく白星をもぎ取る不戦勝。現役の力士はどのように感じているのだろうか。
文章:陰と陽