雨が降っているわけでもないのに、天井から水滴がポツポツと落ちてきました。冬美は天井を見上げたあと、不可解現象に首をかしげました。
「室内なのに水滴が落ちてくるなんておかしいわ。どうかしたのかしら」
水の粒は一定のリズムを刻みながら、ポツポツと落ちてきました。水滴は大きくなることもなければ、小さくなることもありませんでした。
透明な雫は三分後も止まりません。冬美の脳裏に欠陥住宅が頭を過ぎります。一年前に購入したマンションは、悪徳業者によって作られたのかなと考えました。
「このままだと気味が悪いわね。修理業者に見てもらおうかしら」
修理業者の4文字が引き金となったのか、水滴はピタリとやみます。その後は、一滴たりとも落ちてくることはありませんでした。
冬美は空を見上げました。室内のはずなのに、どういうわけか虹ができていました。真夏の正午に起こった現象は、大きな変化を予感させるものでした。三〇年後の地球はどうなっているのでしょうか。
冬美は気づいていませんが、怪奇現象は天使の魔力によって起きていました。人間の反応を楽しむために、ちょっとしたイタズラで楽しんでいたみたいです。
文章:陰と陽