サスペンス・ホラー

ショートショート『子供の恐怖』

 

 トントントントン。台所から包丁の音がしています。

 尋常ではなかったため、子供は音のする方向に足を進めます。そこでは、五本の手を操っている女性が野菜を切っています。お化けを見たかのように錯覚してしまったのか、子供は台所から立ち去ることにしました。

 子供は恐怖心からか、部屋に閉じこもってしまいます。妖怪に襲われると思ったのであれば遠くに逃げればよいのですが、恐怖心からか選択を誤ってしまったようです。足が動かなくなったため、近くに閉じこもるので精一杯だったのかもしれません。

 恐怖で身体が硬直してしまった、少年の部屋がノックされました。呪文にかかってしまったのか、子供は死体さながらに動きませんでした。

 聴覚だけは反応したのか、おかあさんの声が少年の耳に届きます。聞きなれた声に安心したのか、子供はようやく身体を動かすことができました。

 子供が助けようとすると、部屋の前には手が五本ある女性の顔が映りました。襲われると思ったのか、少年は扉を閉めようとしますが、大人の力にはかないませんでした。

 彼の鼓膜を再び掠めたのは、聴き慣れた声でした。

「新之助、どうしたの。顔が真っ青だよ」

 腕が五本あるように見えたのはおかあさんだったのか。そのことを理解した少年は、助けを求めるかのように、母親を抱きしめました。

 少年は昼寝から目が覚めた直後だったため、母親の調理中に錯覚を起こしたことにようやく気づきました。寝ぼけていたために、光を感じ取るレンズが少しばかりおかしくなっていたようです。

 

文章:陰と陽

関連記事

  1. 怖い話:『お見送り』
  2. 怖い話『何かいた』
  3. 怖い話『ずぶ濡れの人』
  4. 怖い話『作業服の男』
  5. 怖い話『チャイルドシート』
  6. 怖い話『犬が追うもの』
  7. 怖い話『キュクロプスの夜』
  8. 怖い話『二階からの誘い』

おすすめ記事

『抜け出したい』

周囲にどう思われるか不安で…ドキドキしながら過ごす毎日。&n…

障碍者の多くは距離感を改善した方がいい

 障碍者の距離感に戸惑った、そのような経験をしたことありませんか。…

世界の国と国旗☆第66回目 コンゴ共和国

皆様こんにちはLewis Abe(ルイス アベ)です。いつも…

障碍の種類を絞って支援する事業所もある

 障碍者施設では身体、知的、精神の三つの障碍も受け入れている事業所が多数を占める。障…

就職に学歴は必要か

  学歴は就職に関係あるのか、今回はそのことについて取り上げていきたいと思います。…

新着記事

PAGE TOP