コラム

ショートショート『二度自信を失う』

 

 障碍を持っていたため、一般レベルについていくことはできなかった。そのことで、自信と誇りを失ってしまった。

 失われたプライドと自信を取り戻すために、A型作業所を利用することにした。障碍者施設なら、レベルの高い人はいないだろう。レベルが低いからこそ、障碍者手帳を所持していると信じきっていた。

 予想は九割あたっていたものの、一割は外れていた。A型作業所に通っている理由が見あたらない利用者がいたのだ。発達障碍とは名ばかりの天才にしか思えなかった。支援者よりも高度なことを理解できるのは障碍者ではない。

 

一般をはるかに超える能力を所持しているにもかかわらず、この人はどうしてこんなところに通所しているのだろうか。早いところ一般就職して、もっとたくさんのお金をもらえばいいのに。障碍者枠なら引っ張りダコだと思うし、職種が適合していれば、一般会社においても十分に通用する

 

 圧倒的なレベルを見せ付けられたことで、完全にモチベーションを奪われてしまった。粉々に打ち砕かれたプライドが元に戻る日はやってくるのだろうか。

 

文章:陰と陽

 

関連記事

  1. エッセイ:『連休の夢』
  2. 中井 久夫『治療文化論: 精神医学的再構築の試み』岩波現代文庫
  3. トマス・ペイン『人間の権利』岩波文庫
  4. 障碍者手帳更新及び自立支援手続き費用の一部補助を行う地域がある
  5. 障碍者支援とは障碍者を論評するだけの場になってしまっている
  6. 自治体によっては、アルバイトをしながら就労移行(B型作業所)を利…
  7. 広く浅くが唱えられる限り、発達障碍は生きにくい
  8. HSPについて
PAGE TOP