コラム

ショートショート『庶民が大金を入手した末路』

 

 藤原綾香は宝くじで一等を当てた。彼女の目の前にはトランクケースに入った三億円が置かれている。

 綾香は本物なのかを確かめるために、一〇〇万円の束を掴んでみた。紙の薄さ、印刷具合からまぎれもない本物だった。

 人間は一度に大金を手にすると、金銭感覚がマヒしてしまう。彼女はこれまでの鬱憤を晴らさんばかりに、あちこちでお金を使いまくった。綾香の金遣いの荒さは、あちこちで評判となった。

 半年としないうちに、残金は一〇〇万円を切っていた。彼女は金銭が無限でないと知っても、金遣いの荒さを改めることはできなかった。人間は一度ついてしまった、癖を治すのは容易ではない。

 大富豪気分から抜け出せない女性は、闇金で借金を抱えることとなった。借金は百万、二百万と増えていき、一年としないうちに一億円に達していた。

 仕事を辞めていた女性にお金を返す当てはなかった。借金の支払いに困ると最終手段に出た。警備員が大金を運搬しているところを狙い、窃盗事件を働いた。

 数日としないうちに実行犯であることを割り出され、綾香は警察に逮捕されてしまった。宝くじで一等を当てたばっかりにどん底に転落することとなった。

 一年前は天国だったのに、どうしてこうなってしまったのだろうか。綾香は事情聴取を受けながら、そのようなことをに考えていた。

 

文章:陰と陽

関連記事

  1. 伊藤裕『なんでもホルモン 最強の体内物質が人生を変える』朝日新書…
  2. メンタルが大事
  3. 『他人(大切な人)』を幸せにする方法。
  4. ランドセルのスポンサーは祖父母だけど双子だとちょっと焦る
  5. テレワークと健康な朝
  6. 小説:『借金を完済した直後にあの世に旅立った女性は異世界に転生(…
  7. 犬の隠された本音
  8. 小説:『知的障碍を発症した女性は、入院先で少女と出会う 上』
PAGE TOP