空から突如舞い降りてきた、本物そっくりの偽札をどれだけの人間が店で使用するのか?
内面の欲望をリサーチするために、実際に確かめてみることになった。
全国各地で偽一万円札が大量にばらまかれた。通行人は空から舞い降りてきた、本物そっくりの偽札を必死の形相で拾い集めていく。一円の価値もないことを知らずに、タダの紙に夢中になっている光景はまったくもって滑稽だった。
偽札をバラ撒いてから五分としないうちに、店で使用された。店主は偽物であることを見抜き、すぐさま警察に通報した。数十分後、パトカーが店前に到着し、偽物を使用した客は逮捕された。
どうしてすぐに見抜けたかというと、透かしが入っていないから。近年のお金は偽造防止のために高度な技術を用いている。
偽造された偽札の使用は後を絶たなかった。空から本物のお金が降ってくるなんてありえない。
拾った紙を使用しようなんて、くるっているとしかいいようがない。欲望をコントロールできる正常な人間なら、偽物であることをすぐに見抜ける。
一か月後、逮捕者は十万人を超えていた。社会には偽札にすがる人間が多数存在することを証明した格好になった。
今度はどんなことをして、人間の欲望を試そうかな。発案者は胸の内でほくそ笑んでいた。
文章:陰と陽