コラム

ショートショート『空から偽札が舞い降りてきたら』

 

 空から突如舞い降りてきた、本物そっくりの偽札をどれだけの人間が店で使用するのか?

 内面の欲望をリサーチするために、実際に確かめてみることになった。

 全国各地で偽一万円札が大量にばらまかれた。通行人は空から舞い降りてきた、本物そっくりの偽札を必死の形相で拾い集めていく。一円の価値もないことを知らずに、タダの紙に夢中になっている光景はまったくもって滑稽だった。

 偽札をバラ撒いてから五分としないうちに、店で使用された。店主は偽物であることを見抜き、すぐさま警察に通報した。数十分後、パトカーが店前に到着し、偽物を使用した客は逮捕された。

 どうしてすぐに見抜けたかというと、透かしが入っていないから。近年のお金は偽造防止のために高度な技術を用いている。

 偽造された偽札の使用は後を絶たなかった。空から本物のお金が降ってくるなんてありえない。

拾った紙を使用しようなんて、くるっているとしかいいようがない。欲望をコントロールできる正常な人間なら、偽物であることをすぐに見抜ける。

 一か月後、逮捕者は十万人を超えていた。社会には偽札にすがる人間が多数存在することを証明した格好になった。

 今度はどんなことをして、人間の欲望を試そうかな。発案者は胸の内でほくそ笑んでいた。

 

文章:陰と陽

 

 

関連記事

  1. 短編小説 : 『縮まらない距離』
  2. 物語の一巻目を簡単に解説! 第八回【とけだせ! みぞれちゃん】
  3. 課金は塵も積もれば山となる
  4. ファッションLGBT
  5. 安直なツールとしての「蛙化現象」
  6. 介護事業所の管理者のテレワーク解禁
  7. 自分のやりたいことを見つけよう
  8. 映画『裏窓』をご紹介

おすすめ記事

漢字クイズ①-皆さんは、いくつ分かりますか?-

皆様こんにちは!椎名 夏梨(しいな かりん)です。今回から、…

世界の国と国旗☆第37回目 カタール国

皆様こんにちは椎名 夏梨(しいな かりん)です。いつも読んで…

社会における「えこひいき」

 人間社会において、「えこひいき」はつきものです。遭遇したことがないという人はいない…

エッセイ:『マーさんのこと』

むかし、マーさんという人がいた。若いころから事業を起こしては失敗を繰り返していた…

怖い話『誰の頭?』

3階の自宅マンションにいると、外でガシャーン!と凄い音がした。「…

新着記事

PAGE TOP