コラム

短編小説『利用されているのに、未来に期待する愚かな男』

 

 妻からあなたはお金を持ってくることしか価値がないといわれた。

 現実はそうだとしても、妻が喜ぶための努力を色々としている。そこのところをちょっとくらいは感じ取ってほしい。

 妻が食費、光熱費、水道代、ガス代、新聞代として二〇万円を請求してきた。男は当然のように金をこびろうとする妻に大いに腹が立った。家でゴロゴロせずに、ちょっとくらいはお金を稼ぐ努力をしたらどうなんだ。正社員は難しいとしても、パートならいくらでも受け口がある。一日4時間でいいから仕事をしろ。

 食費などを合計しても一〇万円に届くかどうかといったところ。残りは妻の手元に残る。彼女はどのように使うつもりなのだろうか。化粧品、日用品などには使っていない。

 妻にお金を渡すと、用済みとばかりに居なくなってしまった。最初はあった「ありがとう」の5文字も消えていた。

 出会った当初は楽しそうな表情を浮かべていた。いつからあんなふうになってしまったのだろうか。

 妻は最初から金目当てで近づいてきたのかな。男は隠された本音を見抜けぬまま、婚姻届けにサインしてしまった。女を見る能力が欠けていたようだ。

 愛想笑いすら見せない妻、彼女に二〇年前の笑顔が戻ってくるのはいつになるのだろうか。男はその時をずっと待ち続けている。

 

文章:陰と陽

関連記事

  1. 吉村萬壱『死者にこそふさわしいその場所』文藝春秋
  2. 過剰な誉め言葉はやめましょう
  3. 【おすすめ】『推手』(1991)台湾・米国合作【必見です!】
  4. 小説:『彼女との約束(2)』
  5. 学びは楽しいもの
  6. エッセイ:『日常』
  7. 一人の若者が太宰治について思うこと
  8. 物語の一巻目を簡単に解説! 第六回【八十亀ちゃんかんさつにっき】…
PAGE TOP