魂を抜かれた幽霊が地上人に向けてちょっとした悪戯をする。天国ではそのような遊びが流行っていた。
悪戯に当たってのルールブックがある。命を奪う、怪我をするような悪事は不可。そのような呪いをかけられないよう、力を抑制されている。同じ人に呪いをかけられるのは一度までとなっている。
一か月前に魂が幽体離脱した女性は、通行人に向かってある呪いをかけた。数秒後、通行人は500円玉を地面に落としてしまう。すぐさま拾い上げて事なきを得た。
他の幽霊は勉強に取り組んでいる、学生のシャープペンシルの芯が折れるように呪いをかけた。勉強している学生は、力を入れすぎるあまり芯を折ってしまった。
地上では靴が浮力を受けてないのに浮く、扉がわずかながらに動く、ハンカチの位置が勝手に変わっているといった不可解現象に見舞われる機会が増えていた。彼らは幽霊からのちょっとした悪戯であることを知らない。
幽霊は地上人の小さな苦しみを、ほくそ笑んでいた。他人の不幸は蜜の味というのを楽しむ、幽霊は悪事を働くのを辞めなかった。
文章:陰と陽