サスペンス・ホラー

ディストピア『見果てぬ、地平』

 

首都にやって来て、初めて街の荒廃ぶりを目の当たりにした。
噂では聞いていたが、まさかここまで酷いとは、予想した想定の範囲内を超えている。

実際にテレビから流れてくる番組といえば、お笑い芸人やアイドルグループが出演したバラエティもの。あるいは彼・彼女らが、とある街を散策して、ご当地のスポット料理を紹介するようなグルメ番組。はたまた、昔からのクイズ番組。その他、歌番組やスポーツ番組などといった、無難で差し障りのない企画を取り扱かったテーマ群が並んでいる。同じような内容を志向しながらも、目立たないところで差異化を図りつつ、各放送局は視聴率を競い合っている。

放送局側の主観的選択を含んではいるが、メディアの扱うテーマは、どれも画一的な内容で統合されている感は歪めない。

 

『百聞は一見にしかず』で、実際に目にした街の様相といえば…。
大通りをはさんで、ひとつ中心部から外れれば、街の姿はガラリと一変する。そこで垣間見た事実とは?

「道路の傍にたむろするあの集団は一体何者だ!」

身に纏った服を見ると、時間の経過とともに、ほとんどスリ切れた衣装に変化してしまっている。年恰好は多様ではあるが、明らかに衰弱していると思われる人たちが、そこで息を潜めていた。さらに驚いたことに、その先の前方に窪んだところがあり、そこに目をこらせば、浮腫の影響で全身がひどく膨れ上がり、動けなくなった人々が横たわっている。それは、死んでいるのか若しくは寝ているだけなのかは、至近距離まで近づかないことには判然としない。吹き出物ができたかのように顔面が膨れ上がっている人、あるいは臀部の肉が突き出たままの人。櫛が通らなくなるほど、髪の毛が縺れあって固まったままで、もう何年も風呂に入ってないことは一目瞭然だ。

「わが国の首都が大変なことになっているらしいぞ!!」

地方で暮らしている住民は、あたかも都市伝説と化した噂話を頼りに、首都の現状を想像するだけであった。

 

この度、ようやく、首都に潜入することができた塩梅である。

「誰も悲観していない理由とは…⁉︎」

 

通りを歩く人たちには、こうした惨状を把握する力さえ、既に奪われたようだ。この風景が常態化すれば誰も驚かなくなり、当然の如く防衛反応が作動する。

つまり、

「このような現実は仮想空間であり、恰も自分には関わりのないことだ」

と、思考回路を遮断し切るかのような反応といえるであろう。

 

「仕方あるまい。このまま裏通りを抜け出して、再び表通りへ向かおう」

 

文章:justice

 

【筆者あとがき】

ディストピア作品で有名作品を一つ上げるとすれば、言わずと知れたジョージ・オーエルの『1984年』です。作品の概要を大まかに紹介しますと、全体主義国家によって統治される近未来の世界を描き出しています。『1984年』では、世界を絶望的に描写していきますが、その一方で、そうした恐ろしい世界(恐怖政治)が到来しないよう、作品を深く読み込んでいくことにより、ディストピアに対する予防線を張ることが出来る傑作に仕上げっています。

 

傑作とは、作品が世相を先取りしている印象を与えるのに成功しているからこそ、何世代にも渡って読み継がれるのだと思います。

 

※ディストピア作品…世界を理想的に描いたユートピア作品とは正反対の構想で描かれた作品。

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