コラム

エッセイ:『F君のこと』

 

Fという友人といえば友人だが単なる知り合いだと言えばそうとも言える存在がいた。

そんなくらいだから、向こうもこちらを友人と思っていないだろう。

 

Fの思い出を述べたい。

 

以前、金八先生のDVDセットを代わりに購入してくれとFに頼まれたことがあった。

親に知られたくないため自宅の蔵に隠すそうで、私が先に購入して、Fが田舎から大阪に受け取りに来ることになった。

 

アマゾンで購入したのだが、金八DVDセット(以下金D)のレビューに「これが買える人がうらやましい」というものが多くあった。

Fは私と同じく就職に失敗したくちで、実家に住んでいるので稼いだお金を自由に使えるというだけで、全然うらやましくない境遇ではあった。

 

十数万もするものを先に購入して逃げられたらどうするのか、とか、こっちは大阪まで数十分で行けるとはいえやたら重いものをわざわざ運ぶとか、私は色々な意味でお人よしであり、姉には「ようそんなんやるわ」と半ば呆れられた。

 

金Dを受け渡したあと梅田で昼飯を一緒に食べるということになり、ラーメン屋に入ったのだが、これほど手数かけたんだからおごってくれるかと期待したのは大間違いで、全く気をつかわないのはFらしいといえばらしかった。

 

今頃Fはどうしているだろう。

これを読んでいる方々にも、友人のような知り合いのような中途半端な存在がいて、たまに「あいつどうしているだろう」なんて考えることがあると思う。

 

生きていると、人々や物事がただ移ろいやすい天気のように過ぎ去っていく。

 

 

文章:増何臍阿

 

画像提供元 https://visualhunt.com/f7/photo/4674861432/c87209d271/

 

関連記事

  1. 『韓国が能登半島地震に300万ドル支援』
  2. バスの中で酔っ払って寝る
  3. 気づき
  4. 病んだ社会
  5. 仕事の縁はどこで生まれるかわからない
  6. 映画『お引越し』の紹介
  7. 「9月になっても暑い」
  8. エッセイ:『マーさんのこと』

おすすめ記事

違和感のある支援者の発言

 障碍者の支援者の発言に対して、違和感を持っている当事者は多いと思います。&nb…

【サッカー】ヨーロッパのサッカーシーンあれこれ

プレミアリーグは、マンチェスターシティが最終節に逆転勝利し優勝を決めました。&n…

なぜ幽霊には足がないのか?

夏になるとテレビなどで怪談話をよく見聞きします。今では考えられないことですが、筆…

怖い話『戻ってきたのは誰?』

大学時代、冬の温泉合宿のこと。夜の飲み会を終えて寝静まっていた頃…

『荷物』

小さい悩み事だった。いつしか…悩みが大きくな…

新着記事

PAGE TOP