小川寛大『南北戦争 – アメリカを二つに裂いた内戦』
アメリカ南北戦争についての予備知識としては、リンカーン大統領が奴隷解放を宣言したこと。北軍の勝利でそれが決定的となって国家分裂の危機を乗り越えたと言うような、教科書的なものしか持ち得ていませんでした。
著者曰く、この本は初心者向けにアメリカ南北戦争の概要を知るための手引書として執筆したとのことです。
その言葉を裏切ることなく、本書はとても読みやすいものに仕上がっていました。
南北戦争の対立軸としては、北部諸州を基盤とする共和党。
一方、奴隷制擁護派の民主党が合衆国を脱退。「南部連合国」と言う国家体制を擁立します。
北部がそれぞれの州を一つに束ねるところの「連邦制」を堅持しようするのに対して、南部の方は、それぞれの州の権利の独自性を強調しました。
つまり、南部が連邦制の権利を優先させようとする方向とは違った道を選択したことから、対立の溝は大きくなり、やがて内戦に突入していくことになります。
この本は、南北戦争が勃発する前夜の1861年から、戦争が終結する1865年までの出来事について、ポイントを絞って通史的に書き進めています。また著者は、双方の主張を順番に取り上げて論点を解説しながら紹介していました。
こうした配慮も手伝って、一方の主義・主張にとらわれないで、あくまでバランス良く公平に取り上げる姿勢で書いていたことが、読み終わった後に実感として伝わってきました。
この本は歴史を史実にしたがって、ありのままに書こうとする著者の意向も反映されています。歴史を中立的な立ち位置から書くことは、言葉で言うほど簡単なことではありませんが、それが出来ていた上に分かりやすい内容だったので、アメリカの南北戦争を学びたい人にとっては、この本は良い導き手になることでしょう。
それで、南北戦争の残した爪痕は、現在のアメリカにおいても、人々の潜在化で影響を及ぼしています。
文章:justice