コラム

ショートショート『障碍者の闇』

 

 遠藤太郎は障碍者ゆえに他人とは異なる部分がたくさんあった。

 周囲はそれが気に入らなかったのか、多数で叩きにかかった。大勢の前では、一人の力など無力である。

 いじめだけでなく、仲間外れにもされた。ありとあらゆることで、心のダメージを与えてきた。

 教師も自分に責任を及ぼしたくないのか、見て見ぬふりをする。インターネットなどでいじめについて書かれていたけど、一部分が当時と完全に被っていた。二〇年以上が経過しても、人間社会で起きていることについては変化がない。文明が日々進歩しても、人間の心は一ミリたりとも前に進まない。 

 大人になると、さすがに目に見える行動はとりにくくなる。暴力をふるうと警察に連絡される、暴言であったとしても面倒なことになりかねない。

 いじめた当人が車の運転を苦手だという情報を収集し、善意のつもりで地方に帰って来いという誘いをかける。内心では事故死させようなどと思っていることはおくびにも出さない。

  幼少期は完膚なきまでに叩きのめして、最後は善意を装って口封じを図る。自らの手を汚すことなく、完全犯罪を成立させる。一般人とはつくづく恐ろしい生き物だなと思う。

 多くの悪魔の手から身を守れるよう、生きるための知恵を身に着けていきたい。思惑通りに殺されてたまるか。

 

文章:陰と陽

関連記事

  1. 藤井聡太七冠は前人未到の八冠を達成できるのか
  2. 視覚障碍者向けのB型作業所の紹介
  3. コラム:『庭園にて』
  4. 「理性」というもの
  5. 支援者ができるのは一つだけ【障碍編】
  6. 小説:『自分の道(9)』
  7. トマス・ペイン『人間の権利』岩波文庫
  8. 『じゅうぶん豊かで、貧しい社会:理念なき資本主義の末路』のご紹介…

おすすめ記事

視覚障碍で事務職を目指す事業所がある

 視覚障碍は障害の程度により、1級~6級まで区分されています。視野範囲、視力などに基…

A型作業所を社内に作る企業が増えつつある

 従来のA型作業所は施設内にて、障碍者同士で勤務するというのが主流だった。作業も小学…

自分の心の中にある「悪の生命」

人には愛するという心と憎むという心が同居しています。善の心と悪の…

怖い話『お入りください』

いつものように、病院にやってきました。月1回は診察を受けて、お薬をもらうのです。…

大相撲の7月場所で白鵬が全勝優勝

 大相撲の7月場所が終了し、白鵬が全勝優勝で終わりました。7月場所で思ったことについ…

新着記事

PAGE TOP