コラム

安部公房著『砂の女』のご紹介

安部公房著『砂の女』のご紹介

 

昔の日本小説には今のものとは異なる魅力があるのではないでしょうか。

 

安部公房著『砂の女』は1962年に新潮社より書きおろし長編として刊行され、二十もの外国語に翻訳された氏の代表的作品です。(なんと60年も前…)

 

昆虫採集を目的に砂丘にやってきた高校教師の男が、女が一人住む砂穴の家に閉じ込められ様々な脱出の試みを繰り返す物語。試みはことごとく失敗し、しだいに砂穴での生活に順応しはじめる男の姿を描くことで、市民社会で生きる人間存在の在り方や日常性の真相を深くえぐりとった作品です。

 

 

ここでちょっと私事を。

ある女性に「おすすめの安部公房本は何ですか」と訊かれて、とりあえず本書を挙げたんですが、あまり気に入らなかったようでした。

その女性の親戚が「安部公房おもしろいよ」と言っていたため興味をもったようですが、向き不向きがあるのでしょうか。

 

妻も「安部公房はきらい」と言うし、父は「暗い」と一刀両断。

友人が短編をほめていたほかは、周りに好きな人がいない作家。

それが安部公房です。

 

日本国内よりも海外でのほうが評価が高いというのはやはり本当なのでしょうか。

 

しかし、加速度的に進むストーリーは悲劇性を帯びていて終盤まで一気に読ませるし、娯楽性が十二分にありながら純文学として完成されていて、すごい作品です。

 

興味があればいかがでしょうか。

 

 

文章:増何臍阿

関連記事

  1. 黄金の血液を持つ人もいる
  2. 生意気な言動には鉄拳制裁
  3. オースター『最後の物たちの国で』のご紹介
  4. 阪神タイガースは18年ぶりにセリーグ優勝できるのか(100試合終…
  5. 『じゅうぶん豊かで、貧しい社会:理念なき資本主義の末路』のご紹介…
  6. 京阪3000系の余剰車は13000系に組み込まれた
  7. 長生きの秘訣は雑菌、と言えなくもない
  8. もっと本を読もう! もっと活字に触れよう!

おすすめ記事

【海外ニュースウォッチ】中国ファストファッションのアメリカ事業拡大【第二十回】

海外のニュースから、筆者が気になったものをピックアップしてわかりやすくお届けするシリーズです。…

仕事を頑張るためには、セルフケアが大事

こころと身体が健康でなければ、いい仕事は出来ないと思います。仕事で結果を出すために、こころと…

『タンポポ』―空に、羽ばたく瞬間―

タンポポの種を…ふぅーと…息を吹きかけると……

役所の申請手続き(障碍者手帳等)は、時間が掛かり過ぎる

  障碍者手帳、自立支援の手続きが遅くなると、当事者、企業、病院関係者に迷惑がかかっ…

京阪電車における変則運用

 京阪電車で行われている、面白い(他社ではあまり見られない)運用についてあげていきた…

新着記事

PAGE TOP