コラム

小説:『彼女との約束(2)』

 

前回まで

小説:『彼女との約束(1)』

 

前回からの続き

 

 相撲界の基礎知識

 相撲界は幕内、十両、幕下、三段目、序二段、序の口の6つの階級に分けられる。定員は幕内42、十両28、幕下120(幕下付け出しは含まない)、三段目200(三段目付け出しは含まない)となっている。序二段、序の口についての定員は設けられておらず、おおよそ4:1の比率である(場所ごとによってやや異なる)。

 大相撲会で関取と呼ばれるのは十両以上のみ。相撲協会には650~700名近い力士が在籍しており、関取を名乗れるのは1割程度。狭き門といえるのではなかろうか。

 相撲協会から給与を支払われるのは関取と呼ばれる人たちのみ。幕下以下にも優勝賞金や場所ごとの手当てなどは支給されるものの、正式な給料は一銭も支払われない。

幕下以下の給料を0としているのは、相撲協会から一人前と認められていないから。関取となっていない者は、力士用成員としての扱いを受ける。 

 幕下以下の力士は所属部屋における共同生活を義務づけられ、結婚することも認められない。関取にならなければ、何一つ自由にならない世界に身をうずめている。

 前相撲から全勝を続けた場合、五場所で関取にあがれる。実力のある力士は、すぐに上に行けるシステムを採用している。

 十両への最短昇進記録は6場所。過去にはわずか一年間で関取の座に上り詰めた力士も存在する。雄介は相撲経験こそないものの、最短記録を目指していきたい。

 大相撲会では四股名を決めなくてはならない。雄介は一晩悩んで、夢桜にすることにした。高校時代の彼女だった夢白桜にちなんでいる。疎遠になったものの、二人で相撲を歩んでいきたいという思いを込めることにした。

 夢桜には、桜と結婚する夢をかなえるという意味合いも含まれる。現実となるのか、幻となるのかは当人しだいである。

 

 前相撲を終える

 前相撲を終え、序の口に名前を掲載された。前相撲で3連勝したため、一番出世として扱われた。出世には前相撲を取る人数によっては、二番出世、三番出世となることもあり、早く出世した力士の番付は少しだけ上位になる。

 番付の文字は上位ほど大きい文字となり、序の口は非常に小さく表示されるのみ。虫眼鏡を用いなければ見えないレベルといわれる。

場所前とあって、力士は熱心に稽古に取り組んでいる。現在の部屋頭である、東小結の北東侍はより気合を入れていた。

 皆が熱心に稽古している中、相撲部屋に配属されることになった男は黙々と雑用をこなしていた。序二段、序の口の力士は、部屋のちゃんこづくりなどを交代で担当する。

 横では三〇代と思われる、ベテラン力士がちゃんこを作っていた。年功序列ではなく、実力のみで判断される世界なのだと思い知らされた。夢桜はああいう男にはならないようにしようと心の中で誓った。

 糸瀬川部屋のちゃんこは、健康に悪そうな色をしている。大量の濃い口醤油を使用し、底も見えないほど黒くする。材料が隠れてしまうため、闇鍋を食べているような気分になることもしばしばだ。

 ちゃんこの味については、部屋で一番番付の上の力士が決めることになっている。現在のトップに立つのは小結の北東侍。初土俵から関取昇進までは時間がかかったものの、その後は順調に番付を上げていった。32歳になって初めて、三役の地位をつかむことに成功した。

 糸瀬川部屋には北東侍以外に、2人の関取がいる。一人は幕内筆頭の沖ノ島、もう一人は十両の上位に所属する摩天王。二人については二〇代前半と若く、将来有望とされている力士である。

 沖ノ島については薄味のちゃんこを好むとのこと。北東侍のような底も見えない味は受け付けないようだ。あれを食べたいと思うのは少数派ではなかろうか。

 ちゃんこの味を改善させるために、北東侍に大負けしてほしいと思う。見た目で食欲をなくすような色だけは、絶対に口にしたくない。

 三人の関取については結婚しており、家族と一緒に生活を送っている。顔を合わせる機会はそこまで多くない。

 十両昇進の手前にいるのは二人。西幕下筆頭の白露、東四枚目の高盛である。二人は来場所の成績によっては、関取になれる。それゆえ、熱心に稽古に取り組んでいた。

 

次回へ続く

 

文章:陰と陽

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