コラム

ショートショート『心を満たす人』

 

 心を満たしてくれる人は希少なのか、滅多に出会うことはない。一生に一度あればいい方といえよう。

 桜はこれまでの人生で一人しか出会っていない。他の人がどんなに親しく、優しくしても、あの人よりは格段に劣っていると思ってしまう。 

 心を満たしてくれる人は手の届かないところに行ってしまった。どんなに伸ばしたとしても、指一本振れることすら叶わない。生きているうちに、顔を合わせる機会もないと思われる。

 人間の記憶は、時間の経過と共に薄れていくもの。心を満たしてくれる存在のはずなのに、どのような声だったのかを完全に思い出すことができない。透き通っていたのをかすかに覚えているだけだ。

 顔を思い出すために、学校時代の卒業アルバムをそっと開いた。心から本当に必要としてくれていたその人は、他人に向けて笑みを向けているように感じられた。一度でいいから、自分にも同じようにしてほしかった。

 卒業アルバムをそっと閉じる。いつまでも過去に捉われていてもしょうがない。これから出会う人間を大切にしていけるといいな。

 

文章:陰と陽

関連記事

  1. エッセイ:『Dad’s complaints(おじさ…
  2. 京阪電車のダイヤ改正を見て感じたこと(2023年8月26日ダイヤ…
  3. 前野隆司著『実践ポジティブ心理学』のまとめ【第五回】
  4. 小説:『彼女との約束(5)』
  5. フランツ・カフカ『城』前田敬作【訳】新潮文庫
  6. 『すべて失っても…』残っているもの。
  7. 作文は思いをぶつけるサンドバッグ
  8. 藤田和也『やってはいけない不動産投資』

おすすめ記事

2020年7月からレジ袋有料化

 来月から環境対策の一環として、レジ袋が有料となります。値段は店によって異なり、2~…

バス車内が地獄と化した。

バス車内が地獄と化した。順を追って話そう。朝通勤のバスに乗り込む…

アイデンティティ、固めたいですよね?

「イヤホンで音楽を聴きつつ、スマホを操作しつつ、歩道を逆走する自転車」を見ると(以下検閲削除)(挨拶…

できない人を頼ってはいけない

 筆者の個人的な意見として聞いていただければと思います。 忙しい…

お金を稼げない確率が高いコンペにどうして応募するのか

出典:Photo credit: Ivan Zanotti Photo on VisualHunt.…

新着記事

PAGE TOP