コラム

ショートショート『パワハラ、セクハラ問題に真摯に取り組んだ結果』

 

 二〇五〇年、日本の会社は大きく変わっていた。

 二〇二〇年以降になると、パワハラ、モラハラ、セクハラ問題が熱を帯びていった。最初は容認されていた行動も、次々と規制がかかっていった。

 社内で行われるのは業務に必要なやり取りのみ。「天気がいいね」、「今日は温かいね」といったごくごく簡単な会話すら行われない。上司が立場を利用して、部下の時間を制約することは許されないという判決が最高裁で相次いだ。

 黙々と仕事に取り組む姿は、ロボットを思わせるものだった。社内では人間の形をしたロボットが仕事をこなしている。

 口調の荒いタイプは、部下、年下であっても敬語を使うようになった。話し方が荒いと判断された場合、パワハラとして処分される可能性があるためだ。

 乱暴な発言については一発アウト。停職、懲戒免職の処分が下されることがある。不必要なことをいわないよう、口をふさぐことが求められる。

 職場のタバコもモラハラ対象として完全にアウト。空気を汚すとして、一〇年前に完全禁煙が義務づけられた。違反した場合、企業は即座に従業員との契約を解除できる。

 肌への接触は指一本であったとしても許されない。故意で肩に触れるとセクハラが適用され、懲戒免職処分とする会社が多くを占めるようになっていた。昔はあったなれなれしいスキンシップは、完全に姿を消すこととなった。

 皆が目指していたハラスメントのない会社は、究極の生きにくさを作り出していた。

 

文章:陰と陽

関連記事

  1. ショートショート『ある野球女子の栄光と挫折』
  2. できない人を頼ってはいけない
  3. 休むことなく、働き続ける髭
  4. 藤井聡太七冠は前人未到の八冠を達成できるのか
  5. 大相撲の新弟子基準及び付け出し資格が変更
  6. 小説:『自分の道(7)』
  7. 『La Peste』(Albert Camus)
  8. 物語の一巻目を簡単に解説! 第十回【これは学園ラブコメです。】

おすすめ記事

障碍者施設は利用者の理不尽に耐えるのが仕事

 障碍者施設においては、一部の支援者の質が著しく低いように感じられる。利用者と同化し…

エッセイ:『不思議な事』

世の中には不思議なことが、多くあります。生命に関する…

私が占いをする事になったきっかけ

私が占いをする事になったきっかけ私について私は幼いころから占いというものにと…

障碍者はどのような分野に就職するのか

 身体障碍、精神障碍、知的障碍によって活躍できる分野が異なる。 身体障碍者は事務…

「ラジオ局の周波数」なぜ切りが良くない?

今回は「ラジオ局の周波数」のお話です。筆者は、日頃からラジオを聴く方ではありませ…

新着記事

PAGE TOP