ジョナサン・スウィフト『ガリバー旅行記』
本書(初版1726年)の正式なタイトルは、『船医から始まり後に複数の船の船長となったレミュエル・ガリヴァーによる、世界の諸僻地への旅行記四篇』 と言います。
本書は、4編から構成される風刺小説で、1700年代初頭から始まった主人公による僻地の旅から得た見識を、旅行記風にまとめた作品集です。
第一篇 リリパット国渡航記
第一篇の小人の国は、教科書にも出てくる有名な物語り。
第二篇 ブロブディンナグ国渡航記
第二篇の巨人の国では、巨人の女性の生態を綴った部分が印象に残りました。
第三篇 ラピュータ、バルニバービ、ラグナグ、グラブダブドリッブおよび日本への渡航記
第三篇は天空の国を旅した時の話と物語の中で唯一現存する国(日本)を描いた話。
ちなみに天空の国篇は、宮崎駿監督の劇場版アニメ『天空の城ラピュタ』を彷彿する内容でした。
第四篇 フウイヌム国渡航記
第四篇は馬が支配する国の話で、支配者である馬の高貴な気質と人間を対比しながら、ヤフーと呼ばれる人類種の野蛮さを炙り出すことに成功した逸品に仕上がっていました。
さて、第四篇の中に出てくる風刺描写は、現代社会にもそっくりそのまま当てはまる内容です。
以下、馬の国と人間社会の違いを比較して語った箇所の一部を転載しておきます。
『友に裏切られることもない。賄賂を贈ったり、お世辞を並べたり、女を取り持ったりして、権力者やそのお気に入りの機嫌をとる必要もない。詐欺や職権濫用に目を光らせることもない。医者に健康をだいなしにされるおそれもなければ、弁護士に破産させられるおそれもない。わたしの言葉尻や行動に何癖をつけて密告するものもいないし、金のために罪状をでっちあげて私を陥れるものもいない。』(P418より)
文章:justice