コラム

エッセイ:『マーさんのこと』

 

むかし、マーさんという人がいた。

若いころから事業を起こしては失敗を繰り返していた。

 

昔の事である。事業といっても、金魚屋とか一杯飲み屋とか、素朴な商店である。

儲かるぞ、という話に乗って次から次へと始めてみるのだが、これがいかんせん上手くいかない。

 

手当たり次第に店を出すだけで、これといった事業計画は作っていなかったと思われる。

お金だけ出さされて騙されたこともあったようだ。

 

何をやっても上手くいかなかったので、見るに見かねた親戚のおじさんが、所有するアパートの管理人として雇ってくれることになった。

 

しかし、これがいけなかった。マーさんはそこの家賃をちょろまかしてしまったのだ。

横領したお金で自分の家まで建ててしまったという。

 

そのあとどうやら裁判沙汰になってようだが、ほとんどお金は戻ってこなかったようである。

 

マーさんが亡くなってだいぶ経つ。いろいろと考えさせられる。

失敗や挫折を繰り返し落ちぶれたために悪事を働いて良い目を見ようとする。

ほんとうは失敗から学んで成功の糧にすればいいのだけれど、それはむずかしかったということだろうか。

 

コツコツと努力するのが一番だと思うが、それでは上手く行かないことも多い。

出来合いの仕組みのなかで精を出しても、他人にうまく利用されるだけ、ということもある。

 

うまくいくのは、意識に行動がともない、行動に意識がともなうようなケースじゃないだろうか。

 

だいたい皆、意識家であるか行動家であるか、どちらかだ。

 

意識がふくらんでそこに行動がともなわない、ということはよくある。

意識家のほうが数が多いと思う。なによりわたしがそうである。

まず行動せよ、と説かれることが多いのは、そういったケースが多いことを物語っている。

 

マーさんの場合は逆で、とにかく行動はする。だが、そこであまり考えないのが良くなかったのだ。やみくもに動いてもダメで、よくよく考える必要がある。

 

考えることと行動することが、ともに高いレベルで一致したときに、ひとは成果を上げられるのではないだろうか。

 

 

文章:増何臍阿

 

画像提供元 https://visualhunt.com/f7/photo/5816680566/fc06f4992e/

 

関連記事

  1. 「道を訊く」エピソード三選
  2. ビートたけしとは縁なさそう
  3. 伊藤周平『社会保障入門』(ちくま新書):ケアを考えるシリーズ3作…
  4. 世界の国と国旗☆第95回目 ソマリア連邦共和国
  5. 国民は怒っていた
  6. レッドホットチリペッパーズと私
  7. 短編小説:『最後は幸せ』
  8. 短編小説:『ふしぎなおとしもの』

おすすめ記事

障碍者がいわれたくない言葉:パート1

障碍者が一般人や支援者(第三者)からいわれたくない言葉、されたくない行動(個人差あり…

【第一回】【「これから何が売れるのか?」がわかる人になる5つの方法】

ちきりん『マーケット感覚を身につけよう』ダイヤモンド社 の紹介本…

女流棋士会を応援しよう

 将棋人口は男性が圧倒的に多く、女性で指すものは少ない。それゆえか、男性において実力…

詩:『いいことはある』

めったにないことだけれど霧が突如として晴れるときがある&nb…

『共有できたら…』―どんなに不安でも誰かと共有できたらいいよねー

将来の不安を…誰かと…共有できたら…&n…

新着記事

PAGE TOP