サスペンス・ホラー

怖い話『もう一人の住人』

 

わたしがまだ幼稚園に通う前の幼い頃。

夕方、家に帰ると、玄関に知らないおじさんがドカッと座っていた。

 

― お客さんかな? ―

 

家に入ろうにも場所を空けてくれそうにないし、さっきから怖い顔で睨みつけている。

わたしはすぐに帰るだろうと、玄関先に出しっぱなしにしていたおもちゃで時間を潰していた。

おじさんがなかなか帰ろうとしないまま、陽も沈んで暗くなってきた。

2階の窓から、

 

「そろそろ家に入りや」

 

などと祖母が声を掛ける。

 

仕方なくわたしはおじさんの横のわずかな隙間を通って家の中に入った。

その間も

 

― 俺に触れたら承知しないぞ ―

 

と怖い空気を醸し出している。

 

その後、お風呂で祖父に、

 

「さっき玄関にいた人、誰?」

 

と聞いてみた。

背広を着た怖い顔のと、特長を言うと、祖父は言った。

 

「うちにあんな人、こんな人おるって人に言うんやないぞ!」

 

文章:百百太郎

 

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