『880トン』
この数字でピンとくる人は多いと思う。
事故を起こした東京電力の福島第一原子力発電所の第1、第2、第3号機の原子炉格納容器内に残っているとされる、溶け落ちた核燃料の推計量のことである。
苦闘する技術者と研究者
今年、2号機で溶け落ちた核燃料の固まり(デブリ)を取り出す作業が始まるが、その量は耳かき一杯分程度と言われている。
残念ながら推計880トンのデブリの取り出す技術は地球上どこを探しても確立されていない。それでも毎日およそ4000人以上の作業員が放射線の中で廃炉に向けて作業を行っている。
放射能を封じ込められるのか
事故が起きてから、溶け落ちたデブリを冷やすために各々の原子炉格納容器に注水が行われている。その水は汚染水として毎日約140トン排出される。
ALPSと言う、汚染水を放射性物質からろ過するための設備でトリチウム以外の放射性物質を取り除いてから汚染水は貯蔵タンクに貯めている。その貯蔵タンクの総数は1061基で計137万トンの容量があるがすでに95%が埋まっている。
昨年4月頃に汚染水はろ過され薄めたうえで海洋に放出すると、時の政府は方針を決めた。2023年春には開始される模様である。
愚かな算数
デブリの取り出しである。ここからくだらない想像をしてみた。
一日1キログラムのデブリの取り出しに成功したとしよう。
880トン÷1キロ=すべてのデブリを取り出すまでの日数≒2411年はかかることになる。
毎日、ロボットなりを使って一日1キロのデブリを掻き出すことに成功するのは楽観的過ぎる想像かもしれないし、それが2411年間続くと想像するのは悲観的過ぎる計算である。
未知の廃炉技術
国と東京電力が廃炉を完了する作業の工程は30~40年とするが、すでに11年が経過しようとしている。廃炉を行うためには炉の中のデブリを取り出さないといけない。あるいはチェルノブイリ原発事故の如く、原子炉ごとコンクリートで固めてしまって放射能を閉じ込めて放置するしかないという意見も出ている。
猛毒である放射能のセシウム137の半減期は30年、ストロンチウム90の半減期は28年とされる。
100年ほうっておけばそれぞれ放射能はざっと10分の1になる計算である。
感想
素人目に考えてもこれはロードマップ(廃炉完了までの工程表)を見直した方が良いのではないかと思える。
人類の新しい火である原子力により発電された電気を何気なく使っている一個人として、ただひたすらその事故の凄まじさにおののき、当たり前のように享受していたエネルギーの副産物のその桁違いの顛末にうろたえるばかりである。
drachan
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