柄谷 行人『遊動論 柳田国男と山人』文春新書
著者の既刊書である『トランスクリティーク――カントとマルクス』や『世界史の構造』から、さらに一歩考察を深めた評論です。
本書では、民俗学者・柳田国男の「山人」の思想を検証し直すことで、遊動性という概念を練り上げ、山人の出自がノマドロジーに当たると指摘します。
簡単に言ってしまえば、
あるひとつの枠内に閉じ込められることのない場
つまり、
縦横無尽に移動可能な場が設定され、しかも人々がその地点において平等に扱われるような空間
です。
こうした空間は、抽象的にしか表現し得ないわけですが、著者はフロイトを援用して「抑圧されたものの回帰」として読み解いていきました。
最後に、本書を理解する上での肝を、下記に記しておきます。
・交換様式の4つの形態
A .互州(贈与と返礼)
B. 再分配(略奪と再分配、強制と安堵)
C. 商品交換(貨幣と商品)
D .X
*ちなみに「X」のところが、柳田が述べた「山人」の位置に該当します。
文章:justice