コラム

トマス・ペイン『人間の権利』岩波文庫

 

トマス・ペイン『人間の権利』

 

エドマンド・バークのフランス革命に対する批判を目の当たりにしたペインが、バークへの反駁の書として書いたのが本書です。

ところで、エドマンド・バークが書いた『フランス革命の省察』は、多くの出版社から刊行されていますが、安価な値段で手に入れやすい書籍として、佐藤健志【訳】の『[新訳]フランス革命の省察「保守主義の父」かく語りき』PHP文庫をお勧めしておきます。

 

保守主義者のバークは、本国イギリスで起きた過去の革命やアメリカ独立革命に際しては、一定の擁護する姿勢を示していたようで、その時期まではペインもバークを認めていたようです。

伝統や慣習など、過去の全てを破壊するのが革新勢力だとするバークに対して、ペインはフランスにおいては、統治の諸原理が圧政に基づいていたためとして解しており、そこに両者の考え方の違いが見て取れます。

 

ちなみに法哲学者の森村進氏によれば、ペインの思想は左翼的リバタリアンに連なるとのことですから、筆者としてはペインの政治思想が古典的自由主義者に属すると見ています。

 

『政府は、社会と文明とがうまい具合に対処できない、限られた数の場合に備えるのに必要なだけで、それ以上は何の必要もなく、政府がそれ以上付け加えることができる有益なものはすべて、政府を持たずに、社会の一致した意見で実行してきたことを示す実例は、けっして少なくないのである。』本書より

 

 個人的見解として、フランス革命は、絶対主義からの開放をもたらした点では評価されましょう。一方、その後において、中央集権制を経て、恐怖政治への道を招き入れたことも記憶にとどめて置く必要があると思います。

 

文章:justice

関連記事

  1. 考えていることと実際にできることの間
  2. 戦後の精神保健医療福祉の年表(主に統合失調症が対象)を作成した雑…
  3. 魔法少女という名の時限爆弾
  4. 小説:『彼女との約束(1)』
  5. 生き抜く力
  6. 小説:『自分の道(4)』
  7. 難しいことに挑戦してこそ人間は成長できる
  8. 小説:『出会いはどこから転がり込むかわからない 上』

おすすめ記事

世界の歴史上人物 第1回目 ― ニコラエ・チャウシェスク

皆様こんにちは!椎名 夏梨(しいな かりん)です。…

幸運を手に入れる方法

出典:© いらすとや. All Rights Reserved.そんなものが有ればいいのですが、…

地元の名産品を使用したA型作業所の紹介

 長崎県の島原市で地元の素材にこだわる、A型作業所(島原むすびす)を見つけたので紹介…

怖い話『手が届かない』

線路沿いの空き地に甘夏みかんの木があります。そこから時々近所の子が、みかんを持っ…

ダイヤ改正までに快速特急、特急以外の3000系に乗車しよう

 京阪電車のダイヤ改正後(R3.1.31)、3000系は完全特急車として生まれ変わり…

新着記事

PAGE TOP