福祉・医療

『統合失調症』と薬物療法

 

 統合失調やその他の精神障害が脳内の神経伝達物質の濃度が原因の一つと解明されてきて『ドーパミン』、『セロトニン』等の神経伝達物質の放出促進薬や拮抗薬が開発され処方されているが、原因の一つであってそれだけでは治療は思うように進まない。(統合失調症にドーパミンD2受容体遺伝子変異は関係しているが原因はそれだけではない。)

 

 具体例を出すと統合失調症の『陽性症状』の妄想や幻覚は違法薬物の覚醒剤(アンフェタミン類)の摂取によるドーパミンの放出でも起こるが統合失調症と覚醒剤使用者の陽性症状は違う所がある。それは幻覚の中の『幻視』の有無である。統合失調症での幻視は皆無で、もしあるとしたら、その統合失調症患者で精神医学論文が書けるほどである。

 

 この様に脳内の神経伝達物質の中の1~3物質程度の問題を、どうこうしても治療法や投薬に限界が出てくる。覚醒剤の様に脳の不可逆的な変容をもたらす薬物は危険すぎるし人道上問題がある。

 

精神科医や医療用薬品メーカーも患者が死に至る副作用の危険が有る薬には否定的で、事実、開発し処方される薬は副作用が少ない物が増えてきており、副作用が少ないことがセールスポイントとして強調される。

 

薬を使わない治療法

 薬を使わない治療法で『電気けいれん療法』(電気ショック)は精神科医による患者のコントロールや懲罰に乱用され、反社会犯罪カルト宗教の『オウム真理教』の信者への『マインドコントロール』に使用された為、(違法薬物も併用された)医師や社会でのイメージが最低になっている。

 

近年、再評価がなされているが精神科の他に麻酔科医が必要なこととイメージが最低のため薬の服用が出来ない患者に対しての消去法的に選択される最終手段として扱われる。

 

 磁気を使う『反復経頭蓋磁気刺激治療』等は過去に『動物磁気』と云う『催眠療法』の基となった物が科学的、医学的な根拠に乏しく心霊主義、オカルト、カルト、見せ物、詐欺に使われたためイメージが低く、また開発されたものの効果が判然とせず研究中の先進医療に留まっている。

 

 『認知行動療法』、『催眠療法』等は薬を使わないと云うことがアピールになっているが薬を使わないから副作用が無い訳ではない。医者や治療者の能力や才能と患者との相性に大きく左右される。しかし薬は開発から臨床試験そして認可まで何十年と掛けて効果を確認し科学的、医学的証明がなされている。

 

薬効の証明がなされているのに薬を使用しないそれらを選択するのは、精神科の処方する薬に拒否感や抵抗感の有る人間が選ぶからで、その様な人間は精神科にも懐疑的でそのような態度だと治療効果は薄い。

 

『ロボトミー手術』は非人道的で、人体実験未満の死より酷い犯罪で術式を開発した医師にノーベル賞を授与したノーベル財団の見識が大いに疑われる。被害者や被害者遺族が授与の撤回を求めているが財団はいまだ応じていない。

 

これらの治療法は治療効果が良くわからない。精神の薬を服用することに恐怖心がある。家族が反対するから選んだ。医者が否定的でやりたがらない。非人道的な犯罪行為なので出来ないと問題を抱えている。

 

現在の『創薬研究』

 『フィリップ・シーマン』が、ドーパミン神経に向精神薬が効いているとの発見で薬が本当に神経に作用していると証明された。精神障害の原因となる遺伝子変異の発見と研究が進み、薬の薬効成分の作用の解明、薬効成分に似た分子構造の化学物質の合成と効能の有無の研究が行われている。

 

それらは今、スーパーコンピューターのシミュレーション上で行われており以前より格段にスピードアップしているが、シミュレーション上で上手くいったから化学物質を合成し実験して上手くいくとは限らない。人種、民族等の遺伝子の違いによる薬効の強弱と副作用の強弱の問題があり、遺伝子という最大の個人情報の内の1つをどう扱うかの問題がある。生命倫理が問われているが容易に答えが出せるものではない。

 

それでも薬物治療の進歩の速度は速くなってきている。未来は明るい。

 

文章:北山南河

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