2020年3月19日を迎えた。本来ならばブラスバンドでの応援、「カキーン」という打球音、「やったー、よっしゃー」という歓声などが、テレビから届けられるはずだった。10点差であったとしても、決してあきらめない姿勢は、消化試合の許されるプロ野球にはないものといえる。
球児も選抜の代表に選ばれたときは、その光景を思い浮かべていたと思われる。母校の応援に参加する、吹奏楽部なども選抜の応援に向けて時間を割いたのではなかろうか。
選抜初出場の高校は白樺学園、加藤学園、鹿児島城西(ここまでが一般選抜)、帯広農、平田(21世紀枠)と5校あった。彼らは他校よりも胸に希望を膨らせていたのではなかろうか。
球児や学校関係者の希望は一瞬にして打ち砕かれることとなる。中国の武漢で発生したコロナウイルスの影響を受けて、高野連が3月11日に大会の中止を決めた。甲子園で試合をさせてやりたいという気持ちはあっても、世間からの反発は予想に以上に大きかった。それを受けて、開催は難しいと判断したものと思われる。
球児たちは甲子園の土を踏むことを目標にして、厳しい練習を積んできた。コロナウイルスによる中止を覚悟していたとはいっても、実際に開催中止が決まった瞬間のやりきれなさは想像にあまりある。
春の出場権を獲得しても、夏に甲子園の土を踏める保証はどこにもない。(大阪、奈良、石川、群馬、大分は確実に出場できないチームが現れる。他の県においても予選を勝ち抜ける保証はない)
人間は自然災害だからと簡単に割り切れる生き物ではない。夏に切り替えていくと大人のコメントを出したチームであっても、本音はやりたかったという気持ちをどこかで捨てきれていない。21世紀枠で選ばれたチームは最初で最後になる確率が高いため、選抜中止の落胆は大きいと思われる。
高野連は出場予定だったチームへの救済策を検討しているものの、方法は明らかにしていない。せっかく選抜の出場権を勝ち取ったのだから、一戦くらいは試合をさせてあげたいと切に願う。球児の夢を叶えられるかは、大人の腕にかかっている。
文章:陰と陽