日本人が初めて9秒台を記録したことによる影響なのか、2020年のオリンピックでは好タイムの出やすい高速トラックが作られた。選手が走りやすい環境を作ることで、オリンピックにおける世界新記録が期待されている。
この話を聞いて、高速水着(レーザー・レーサー)を思い出した人が多いのではなかろうか。あのときは大半の選手が同社の水着を着用し、世界新記録を次々と樹立。日常のトレーニングの成果ではなく、水着によって勝敗が決まるという異常事態が起こっていた。
国際水泳連盟は2010年より、レーザー・レーサーの使用を禁止した。着用する水着によって順位が決まるのは好ましくないと判断したのだろう。水泳の醍醐味を奪いかねない水着に規制をかけることで、水泳は本来の姿を取り戻したといえる。
道具に頼るのではなく、人間の進化そのものを見たい。そのように願っている人は多いのではなかろうか。東京オリンピックで世界新記録を出したとしても、道具がよかったから好タイムだったとケチをつけられるのは、厳しいトレーニングを積んだ選手にはあまりにも悲しすぎる。「選手ファースト」を掲げるなら、彼らのためになることをしてほしい。
文章:陰と陽